日本農芸化学会2026年度大会にて口頭発表を行いました
高砂香料工業は、2026年3月9日~12日に、同志社大学今出川キャンパス、室町キャンパスにて開催された日本農芸化学会2026年度大会において口頭発表を行いました。
チオール化合物の新規回収手法の開発とコーヒー豆への応用
スルファニル(チオール)基を有する揮発性化合物はにおい閾値が低く、食品の香気特性に大きく寄与する重要な成分ですが、含有量がきわめて微量かつ不安定であるため機器分析による検出には煩雑な前処理を要してきました。そこで私たちは、チオール化合物を簡便かつ安定的に捕集できる新規回収材を開発しました。本回収材をコーヒー豆と密封して揮発性成分を回収した結果、2-Furfurylthiolなどの微量チオール化合物の検出を達成し、従来法と比較して10倍以上の検出強度が得られました。簡便かつ高感度な本技術は、食品や衣料、環境など幅広い分野での応用が期待されます。
凍結粉砕低温抽出によるブドウ香気の変化抑制効果の検証
天然物や食品の香りを分析する際、分析の前処理工程において香りが変化してしまい、対象物が本来有する香りを正確に評価できない場合があります。そこで本研究では、前処理工程中に青葉様の香りが生成することが知られているブドウを対象とし、低温条件下で前処理を行うことによる香気変化抑制効果の検証を行いました。その結果、低温処理では常温処理と比較して、青葉様の香りの原因となる炭素数6のアルコール類やアルデヒド類の生成が抑制され、より本来に近い香りを評価できることが確認されました。本手法は、対象物本来の香りを忠実に反映した香気評価を可能とし、本物感のある香料開発に貢献する技術として期待されます。
ユズ果皮精油の香気特性に対する実生・接木および樹齢の影響
ユズは、種から育てる実生では結実までに長期間を要するため、接木による栽培が主流です。一方で、一般に実生のユズは接木より風味が良いとされますが、産地等の環境要因や樹齢まで考慮した厳密な比較研究は限られていました。そこで、本研究では、京都水尾の同一圃場由来のユズ果皮精油を用い、実生・接木および樹齢がユズの香気特性に与える影響を、官能評価と機器分析により検討しました。その結果、実生・接木の違いや樹齢によって香りの傾向が異なることが確認されました。また、接木にくらべ、実生ではLinalool等のテルペンアルコール由来の華やかな香りがより際立つことなど、実生ユズの風味理解の一助となる知見が得られました。
*日本農芸化学会2026年度大会https://www.jsbba.or.jp/2026/