トップメッセージ

地球環境課題への対応、社会課題の解決やより良い暮らしの実現などを通じ社会の発展に貢献しながらすべてのステークホルダーに対して責任ある経営を遂行することが次の100年も当社グループが存続し続けることにつながるものと考えます。
今後もリーディングカンパニーとして持続可能な社会の実現に貢献し続けてまいります。

高砂香料工業株式会社
代表取締役社長


(出典:社会・環境報告書2018)

高砂香料グループは2018年4月に新中期経営計画「One-T」をスタートさせました。最終年度の2020年には創業100周年を迎えます。グループのこれまでの歩みとこの先100年に対する思いを当社代表取締役社長の桝村聡にインタビュー形式で聞きました。


2017年まで推進してきた「GP-3」を振り返って

−「Takasago Global Plan」は3ヵ年ごと、4フェーズに区切られた中期経営計画ですが、直近の「GP-3」を振り返ると、どのような3ヵ年でしたか?

創業100周年を迎える2020年に向けての経営計画「Takasago Global Plan」の中で、3ヵ年ごとの中期経営計画を遂行してきました。フェーズ1となる「GP-1」では基盤強化を、次フェーズの「GP-2」では高砂ブランドの強化を図りました。フェーズ3 の「GP-3」は、2013年に起こした平塚工場の火災事故で供給責任を果たせなかったお客様に対して信頼を回復することや、そのための安全対策など、さまざまな課題を解決する期間となりました。業績としては、売上・営業利益ともに目標に達することはできませんでしたが、営業利益については「GP-3」初年度から着実に増加させております。

基本方針の面では、事業基盤を再強化するため、国内外において積極的に投資を行いました。広島の新工場建設では、火災事故の教訓から最大限の安全対策を講じるとともに、最新鋭の自動調合機を導入するなど、製造から配送プロセスまでの省力化・効率化を図りました。また、当社グループ初の西日本エリアでの工場が完成したことでフレーバー製造拠点の二極化を実現しました。磐田工場では、需要増に対応するため医薬品中間体の生産設備を増強しました。

海外においても、事業成長が見込めるインドやインドネシア、中国、ドイツなどに、積極的に投資を行いました。インドに建設したフレーバー、フレグランス工場と研究所は、2017年より稼働を開始しています。インドネシアでは研究所と事務所を移転するとともに、新工場建設のための用地を取得しました。ドイツで実施した大規模な拡張や改修工事も、2017年に完了しました。

−「Takasago Global Plan」の仕上げとなる、新中期経営計画についてお聞かせください。

2018年からは、最終中期経営計画として「One-T」をスタートさせています。この名称には、国内・海外という壁をつくることなく「ひとつの高砂」=「One-Takasago」として、グループ一体となって計画を推進していこう、という意志を込めています。「One-T」では、「顧客満足度向上」「事業成長戦略推進」「技術革新」「利益体質改善」「人材開発」という5つの基本方針を掲げ、その中心に、「コーポレート」という概念を据えました。「ひとつの高砂」を実現するには、これまで独立性を重視してきた海外拠点との連携強化、基準の統一、仕組みづくり、統一性のある経営やグローバルなコミュニケーションを、発展性のある密度の濃いものにしていく必要があります。そのためコーポレート本部という新たな部門を設置し、これによりガバナンスの強化、グローバル機能の向上を、スピード感を持って推進してまいります。

− 新中期経営計画に掲げている「事業成長戦略推進」とは、どのような構想ですか?

少子高齢化によって日本市場が縮小傾向にある中、当社グループが持続的に成長するには、これまで以上に海外に目を向けていく必要があります。香料の世界市場規模は増大すると予測されており、当社グループとしてもまだまだビジネスを拡大できると考えます。欧米を中心に発展してきた香料産業において、当社グループは早い時期に海外での足場を固めてきました。この強みを活かし、経済発展を続けるアジアや、引き続き成長が期待できる欧州・米州などで、国・地域のニーズを踏まえた付加価値の高い製品をスピーディに開発・提供することを、「事業成長戦略推進」の柱としています。具体的には、すでにインドネシアでの新工場建設に着手しているほか、ドイツではQC センター・物流センターの建設について検討を進めています。これらの事業基盤の拡充と安定的な収益確保によって目指すべき売上目標を、1,700億円と定めました。「GP-3」での業績から20%アップというチャレンジングな数字ですが、数値目標を明確にすることで従業員の達成感やモチベーションも向上し、ひいてはそれが「One-T」の推進力になると考えています。

− グローバル展開を進めるには、人材開発・育成が早急に求められるのではないでしょうか。

必要な場所に最適な人材を配置することが、グローバル展開を進める上でキーになると考えます。それには地域を限定せず、人材に流動性を持たせることが重要です。「GP-3」からグループの人的資源を最大限に活用し、拠点間の異動も含めグローバルに活躍できる環境を整備してきました。「One-T」では、これをより一層強化していきます。ダイバーシティの推進、国が進める「働き方改革」との連動も意識しながら教育・訓練プログラムなどを構築し、従業員が自らの成長に挑戦できる機会を提供していきます。

− 香料会社である高砂香料が目指す「顧客満足度向上」とは、どのようなものでしょうか。

“ 香り” は、食品のおいしさを追求する香り、医療現場での治療に寄与する香りなど、さまざまな分野・目的で必要とされており、人々の心と体の健康=「クオリティ・オブ・ライフ」に深くかかわるものだと考えています。「技術立脚の精神に則り社会に貢献する」という企業理念にもある通り、香料やその周辺技術を通して世界中の人々の心と体の健康に貢献し、生活を豊かにすることで「顧客満足度向上」を目指します。そしてお客様からの信頼は何よりも大事に考えており、「お客様に一番に指名していただける会社になる」という意志を、「2020年にグローバルでトップクラスの香料会社を目指す」というビジョンに込めています。この実現に向けて、営業力、研究・開発力の強化や、徹底した品質管理、迅速・柔軟な対応に取り組んでまいります。

「オープンイノベーション」を視野に入れた、CSR分野におけるさらなる技術革新の深化

− 持続的な成長への挑戦として進めている「高砂香料ならではの技術革新」とは、どのようなものでしょうか。

当社グループは常に変化し続けるビジネス環境に柔軟に対応しながら、独自性・優位性のある技術や製品開発に取り組んでいます。その一方で、変わらないものを突き詰めることも重要と考えます。「根元的な香りの価値」を認識し、技術立脚の企業理念を念頭に研究開発に力を入れてまいります。「One-T」では、グループ内連携だけでなくオープンイノベーションを推進し、他企業や異業種、研究機関、大学とも連携しながら、シナジーによる香りの付加価値提案を行っていきます。例えば脳科学の研究が進む昨今では、「脳科学における香りの効果」などの調査も行われています。これらの分野でシナジーを発揮することで、学術的なエビデンスをもとにしながら、香りが持つ有用性をさらに広げていける可能性があると考えております。

人間の感覚を科学的に分析・評価して新たな価値を創出する「コンセプト」、それを独創的な製品に具現化する「プロダクト」、さらに安全で環境負荷も少なく効率的な生産技術を確立する「プロセス」の3つのイノベーションを有機的に結合させ、技術立脚の企業理念を念頭においた独自性・優位性の高い技術・製品を生み出すことに努めます。

− 高砂香料の独自技術と、その可能性についてお聞かせください。

合成技術については、熱効率が良く、また廃棄物の削減につながるプロセスの改善を進めてきました。そのひとつが連続フロー製造技術です。これは、グリーンケミストリーの流れに沿うもので、アメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局 Food and Drug Administration)でも推奨されている工程です。また実験室レベルでは、フローマイクロリアクターや気相反応装置の実用化も進めています。 独自の触媒技術は、生産プロセスの短縮や原料の削減を可能にしています。また触媒を製品化して幅広い業種に供給することで、お客様の省資源・省エネルギーにも寄与しています。

新たな化合物を合成していく上では、石油からの脱却を目指したバイオ技術の深化も欠かせません。香料は、動物や植物から精油を抽出してきた歴史があります。動植物由来の原料と同じような構造を石油合成によって生み出すことで代替してきました。次の段階として微生物や酵母などを利用した天然由来の香料原料を使って、同じような香りを生み出していこうという動きが広がっています。そこにはバイオ技術が必須であり、これは生物多様性の面からも持続的な社会の実現に寄与するものと考えます。 天然由来の香料原料については、発酵に関する高い技術・知見や工業化に向けた手法を有するCentre Ingredient Technology, Inc.(CIT社)を2016年に買収したことで、当社が持つ発酵素材とCIT社の発酵製造技術を融合させた製品開発・製造を加速させています。今回のグループ会社化によって、当社より技術者を派遣し、新たなバイオイングリディエンツの開発、日本からの製造移管などを行っております。

− 香りビジネスが「生態系」に果たす責任・貢献について、お聞かせください。

当社は小笠原諸島や礼文島などで、固有種の香気捕集を行っています。これは、植物を傷つけることなくその香りを捕集し再現することで、固有種の香りを後世に残すことを目指した活動です。

香料に限らず、香りが生態系の中でどのような意味や価値を持つのかは、生物多様性の観点からも、きちんと認識するべきことのひとつです。この取り組みは、多くの方に生態系や自然保護に目を向けていただくきっかけになるものと考えます。植物の香気捕集活動は、“香り” を扱う我々にしかできない重要な社会貢献活動のひとつと捉え、今後も継続して取り組んでまいります。

CSR推進強化に向けて

− CSR について、「One-T」では推進強化の3年間と位置づけています。どのようにして推進強化を図るのか、お聞かせください。

世界的な課題の解決に向けて取り組むことは、グローバル企業の重要な責任です。そしてこの責任を果たすことが、企業の社会的価値の向上にもつながると考えております。

環境面では、開発・製造からお客様のもとに届き、さらに廃棄するところまで、サプライチェーン全体で幅広い対策が必要です。当社グループは経営基本方針に環境への配慮を掲げており、2002年に制定した環境宣言、2009年に策定した「EHS100プラン」のもと、常に高い意識と目標を持って取り組んでまいりました。「EHS100プラン」は、基本的人権の尊重や地域社会との共生に関する項目も含んでおり、CSR中期計画の中心的役割を果たしています。2013年からは、従来の環境報告書を「社会・環境報告書」に発展させ、環境だけでなく社会分野での情報開示も強化してきました。

2018〜2020年度は「EHS100プラン」の最終(第4)フェーズとなるため、全項目について目標を達成できるよう活動を強化します。従来から注力してきた地球環境課題への対応を継続するとともに、「責任ある調達」「ダイバーシティ」など、社会面での課題も計画に加えています。新たな挑戦としては、気候変動に関する国際的な枠組みであるパリ協定に沿った活動を推進するべく、SBT(Science Based Targets)認定の取得をすることなどを検討しています。

また、2017年6月には、国連グローバル・コンパクトに署名しました。SDGsの目標を意識し、再生可能な資源の利用、環境負荷の軽減などを視野に入れた研究開発にさらに力を入れていきます。今後とも国際的なイニシアチブへの参加を積極的に検討し、日々の事業活動と連動させた取り組みを推進してまいります。情報開示についても改善を進めています。2017年に英語版のサステナビリティレポートを発行しましたが、2018年はさらに報告内容を拡大し、GRIスタンダード(中核)に準拠したレポートを発行しました。

− 2013年には平塚工場で火災事故がありました。その後の安全に関する考えをお聞かせください。

2013年4月10日に平塚工場で火災事故が発生したことを踏まえ、当社グループでは4月10日を「安全の日」と定めています。グループの全拠点に安全に対する考え方を浸透させるべく、2017年からは海外においても、「安全の日」の活動を実施しています。また「EHS100プラン」第4フェーズでは、グローバルでの安全活動の強化、統一された運用に向けて、全グループでのISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)認証取得を目指しています。

安全面については、何をすれば100%の安全を担保できるかという答えはなく、「終わりのない改善」を続けていくことが必要だと考えております。「安全はすべてに優先する」という意識のもと、引き続き従業員への教育・啓蒙や設備の検証を行い、安全文化の醸成を図ってまいります。

100周年に向けての思い

− 高砂香料は2020年に100周年を迎えますが、どんな思いや決意をお持ちですか?

これまでの歴史を振り返ると、その時々で最適な選択をし、その連続によって企業としての体力をつけてきたように思います。コーポレートマーク「スクエアT」に込めた「テクノロジー(技術)、チームワーク(和)を通してトラスト(信頼)を得る」という決意のもと、「One-T(ひとつの高砂)」として一人ではなく、仲間で仕事をしていることを励みとし、社会の要望や変化に対応しながら、着実に歩みを進めます。そして企業理念として掲げている社会への貢献を全従業員が常に意識することで、普段の仕事の価値が社会的な価値となり、企業の価値向上にもつながります。

地球環境課題への対応、社会課題の解決や、より良い暮らしの実現などを通じ、社会の発展に貢献しながら、すべてのステークホルダーに対して責任ある経営を遂行することが、次の100年も当社グループが存続し続けることにつながるものと考えます。今後もリーディングカンパニーとして、持続可能な社会の実現に貢献し続けてまいります。