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2023年3月期の事業の状況及び2024年3月期の業績予想

2023年3月期は、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響を受ける一方で社会経済活動との両立も徐々に進み、緩やかな持ち直しの動きが見られました。また、世界経済につきましては、ロシアのウクライナへの軍事侵攻、それを発端とするエネルギー市場の混乱、米中の貿易摩擦による経済への影響、世界的なインフレ、為替の変動など不安要素も多くありました。 

このような中、高砂香料グループの売上高は前期比15.0%増、過去最高値となりました。

セグメント別では、日本はフレーバー部門において、伸長カテゴリーや新規得意先の開拓に注力し、着実な売上増を実現しました。ファインケミカル部門においては、生産効率の改善等により既存の医薬品中間体の供給可能数量を増加させ、更には新規商材の獲得も実現いたしました。 

米州においては、フレーバー、フレグランス部門ともに、マルチナショナル得意先に加えて、国内・地域を地盤とする得意先への拡販も実現し、成長を維持いたしました。ファインケミカル部門においては、新規品の拡販など積極的な営業展開を図ったことにより好調に推移いたしました。 

欧州においては、フレグランス部門が香粧品向け等の拡販に注力して好調に推移した他、フレーバー部門においては、アフリカ得意先とのビジネス拡大を実現いたしました。 

アジアにおいては、フレーバー部門で注力カテゴリーである飲料およびセイボリー用香料の販売が好調に推移し、エマージングマーケットでの売上も好調に推移いたしました。 フレグランス部門では、エアケア、パーソナルケア、ファブリックケアカテゴリーをターゲットに、マルチナショナル・主要ローカル得意先に経営資源を集中させたことにより、好調に推移いたしました。 

利益面では、国内外において主力製品ならびに新製品の拡販に注力した他、原材料価格等の高騰に対する取り組みとして価格転嫁等も進めてまいりましたが、営業利益は前期比32.5%減となりました。 

2024年3月期は、新型コロナウイルス感染症の経済活動への影響は和らぐものの、今後のウクライナ情勢や資源価格の動向、世界的な金融引き締め等を背景とした各国経済の下振れ懸念などもあり、依然として不確実性が極めて高い状況が続くものと思われます。 

香料業界においては、競合他社との競争環境は厳しい状況が続いておりますが、市場としては、中国や東南アジアでの成長が引き続き期待できる一方、成熟市場である欧米でも底堅い成長が見込まれます。ただし、原材料及びエネルギー価格の高騰、サプライチェーンの混乱等の影響を受け、利益面では厳しい環境となることを想定しております。 

最終年度を迎えた中期経営計画について

2024年3月期は中期経営計画 New Global Plan-1 【NGP-1】の最終年度となります。NGP-1では、「海外の成長促進」「国内の利益改善」「サステナビリティの推進」という3つの基本方針に基づき、5つの柱、重点課題を設定しています。

基本方針の一つめ「海外の成長促進」に関しては、近年、売上高、営業利益ともに安定的に成長してきて、グループ全体の業績を支えるようになってきた海外での事業を更に拡大すべく、各拠点において、組織の充実、活性化をはかっています。また、グローバル基幹システムの構築を推進しており、 昨年度シンガポール拠点への導入が完了し、グローバルテンプレートも確立しました。 2024年3月期には、米国への導入を完了させ、その後はその他の拠点への導入を進めることで、経営資源を世界規模で統一してまいります。 

一方、国内においては市場の拡大が見込めない中で、近年は利益面で厳しい状況にあります。海外での成長が著しいとはいえ、売上高全体の約4割は、今なお国内の売上が占めていることから、安定した収益を生み出す基盤としての役割を担うべく、利益改善を進めております。施策の1つとして、生産体制の見直しによる製造経費の削減を挙げていますが、引き続き自動化、省力化を軸に取り組んでまいります。また、フレーバー・フレグランス製品においても、引き続き事業部門・研究部門・生産部門を中心に検討してまいります。

基本方針の3つめには、「人にやさしく、環境にやさしく」をスローガンに掲げたVison 2040を実現し、長期的な事業の成長を目指す観点から、「サステナビリティの推進」を挙げています。この取り組みの1つにSDGsへの貢献を意識した製品の開発があります。開発に関しては原料、製造方法、製造工程など、多角的な視点から検討を行う必要がありますが、なかでも最新のバイオ技術の導入、それらの技術を用いた製造基盤の強化を促進しております。

これら3つの基本方針に基づき、組織・部門横断的な取組みを推進することで、NGP-1最終年度・2024年3月期は、売上高2000億円の数値目標を達成し、少しでも多くの営業利益を積み上げるべく、全社一丸となって尽力してまいります。

中期経営計画NGP-1「サステナビリティの推進」の目的と活動進捗について

サステナビリティの推進は、今や企業に求められるガバナンスコードであると同時に、お客様からの様々なご要望に応える上でも必須事項になりつつあります。高砂香料グループは、2002年に環境宣言を公表し、それを基点にEHS活動をスタートさせました。現在は、社会面、ガバナンス面においてもより充実させるべく、グループ全体で戦略的にサステナビリティ活動を推進しています。また、Vision2040では「人にやさしく、環境にやさしく」をスローガンとし、多様な価値観を尊重し、自然との共生を目指しています。この実現に向けたサステナビリティ活動を通じて、持続性のある社会への貢献と共に、企業価値を向上させていきたいと考えております。

当社グループでは2030年に向けた今後9年間のプランを纏めた「Sustainability 2030」に基づきサステナビリティ活動を進めています。

現在取り組んでいるテーマの一つに世界的な気候変動問題への対応があります。2020年4月にTCFD提言に沿って、当社グループの方針(ガバナンス、リスク管理、戦略、指標と目標の4項目)を定め公表しました。2021年5月には国際的なイニシアチブである「Science Based Targets」より、温室効果ガスの削減目標の認定を受け、2030年に達成すべき数値目標を明確にしました。 昨年は環境省が支援するプログラムに選出され、Scope3におけるGHG削減へのアプローチを体系的に学ぶ機会を得ることができました。Scope1と2については、国内当社グループのエネルギー管理委員会での取組みを海外にも広げ削減方法に関する意見交換を活発に行っています。

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GHG排出削減に努めるとともに環境に配慮した製造プロセスや製品作りにも注力しています。製造プロセスにおいては、医薬品中間体の製造を、米国FDAの推奨するグリーンケミストリーに沿った連続フロー方式で行ったり当社独自技術による触媒を用いることにより、エネルギー効率を高めています。一方、バイオケミストリーを活用して環境負荷の低い香料素材の開発にも注力しています。従来からの国内での生産に加え、2016年にグループ入りしたCentre Ingredient Technology社の独自の生産技術を活用して高収率なバイオ由来の天然香料素材の拡充を図ってます。

生物多様性の維持はとても重要なテーマです。当社グループでは、シトラス、ミント、バニラ、コーヒーや合成メントールの出発原料となるミルセンなど多くの天然原料を使用しています。当社グループでは、自然環境の保全のため、”TaSuKI Originals, Care and Comply”のもと、地元コミュニティとの連携を強化しています。その活動の一つに、2019年より開始した米国フロリダ州でのグレープフルーツの植樹があります。フロリダは世界有数のシトラスの産地であり、当社グループも長年グレープフルーツやオレンジなどの精油を購入しています。近年フロリダでは、ハリケーンや病害による被害が多発しており、クロップに大きな影響が出ています。そこで、原料の安定的な供給を視野に、地元の精油加工メーカーと近隣のシトラス農園と協同で、グレープフルーツの植樹プロジェクトが実現しました。今年で約9割の植樹を終え、プロジェクト初期に植樹したグレープフルーツからは精油の搾油が始まります。

また、マダガスカルのバニラ、フランスのラバンディンの生産においても、地元コミュニティとの連携を強化することで、生産農家の生産への不安や負担を軽減する活動も行っています。

一方、生分解性の高いアロマイングリディエンツの開発にも注力しています。主としてフレグランス製品の香料素材として使用されているアロマイングリディエンツは、生分解が容易で、地球環境、生態系にやさしいことが市場で求められており、大きなテーマとして捉えています。

その他、環境負荷を低減する活動として、水の使用量の削減、廃棄物の削減、3R(Reduce, Reuse, Recycle)の推進などにも取り組んでいます。プラスチック容器の削減も大きな課題です。香料製品に使用するプラスチック容器はバリア性が重要であることから、プラスチックの複数層構造となっています。そのことがリサイクルをより難しくしていますが、プラスチック容器の削減は重要課題であることから、引続き容器メーカーと環境負荷の低い容器への転換を検討していきます。

当社グループのサステナビリティ活動はESGの各分野から構成されていますが、ここでは環境に焦点を当てて進捗を述べさせていただきました。ESG各分野において多くの課題がありますが、これからも一つひとつ丁寧に課題解決に向けた対応をしてまいります。

Global SAP Project(基幹系システム統一プロジェクト)について、現在の進捗と今後の展開

Global SAP Projectは2020年に始まった中長期的な全社的プロジェクトです。経理財務、生産・調達・物流、品質管理がスコープとなりますが、各社各様となっている業務フローを高砂ベストプラクティスという形で統合し、最新の基幹系システムに統一するというものです。2020年からグローバルで使用するテンプレートの作成に取り掛かりました。コロナ禍ということもあり、完成まで2年近く要してしまいましたが、昨年末には最初の導入拠点であるシンガポールで稼働いたしました。本年はアメリカでの導入作業を進めており、来年には欧州、数年後には日本での導入を計画しています。このような形で基幹系システムを統合しつつ、周辺システムにおいてもグローバル統合を進めていきたいと考えています。

NGP-1最終年度の抱負について

今期(2024年3月期)は、対前年7%増の売上高2,000億円を目指します。営業利益につきましては、原材料及びエネルギー価格の高騰、サプライチェーンの混乱等の影響を受け、対前年約30%減の40億円を予算しています。少しでも多くの営業利益を積み上げるべく、全社一丸となって種々の施策に取り組んでいるところです。

次期中期経営計画(NGP-2)についても検討を開始しています。今後の設備投資においては、新研究所の建設、国内外の工場の生産能力の増強や老朽化への対応など多くの案件があります。利益面では厳しい時ですが、円安効果を除いても売上の方はここ数年非常に順調に伸びていることから、引続き旺盛な需要に応えられるよう社内基盤をより堅固なものにしていきたいと思います。

株主の皆様には、当社グループの更なる発展にご期待いただき、これからも長期的なご支援を賜りますようお願い申し上げます。