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桝村社長

中期経営計画New Global Plan-2【NGP-2】の進捗について

2025年3月期におけるわが国の経済は、一部に弱めの動きがみられましたが、緩やかに回復しました。一方で、世界経済は、緩やかに成長しつつも、ウクライナや中東情勢をはじめとする地政学的リスクや、中国や欧米を中心とした景気後退の懸念などにより依然として先行きの不透明な状況が続きました。香料業界におきましては、内外の経済動向に合わせる形で市場にも変化が見られましたが、概ね堅調に推移しました。

このようななか、当社グループは「人にやさしく、環境にやさしく」をスローガンとする長期ビジョン、『Vision 2040』のもと、中期経営計画『New Global Plan-2【NGP-2】』(2024-2026年度)を推進しています。NGP-2初年度である2025年3月期の売上高は、前期比17.0%増の2,292億円で過去最高となりました。営業利益は前期比562.4%増の153億円で、こちらも過去最高となりました。

事業セグメント別売上高では、フレーバー事業は、米国子会社で主に飲料向け等が堅調に推移したことにより9.8%増となりました。フレグランス事業は、米国子会社において、新基幹システム導入による出荷調整等の状況が改善したこともあり、18.8%増となりました。アロマイングリディエンツ事業は、スペシャリティ品が好調に推移し、20.7%増でした。ファインケミカル事業は、医薬品中間体等が好調に推移し、前期比84.0%増となりました。

地域セグメント別では、日本は、フレーバー事業において飲料向け等が堅調に推移し、アロマイングリディエンツ事業での製品構成の最適化やファインケミカル事業での売上高増加を主因に利益率が改善しました。米州は、前述の米国子会社での状況改善のほか、原材料、製品ポートフォリオ、販売価格の最適化を通じて売上総利益が改善したことにより、増収増益となりました。また、欧州においては、フランス子会社およびドイツ子会社等が好調に推移し、米国子会社同様、製品構成・販売価格・原材料の最適化を通じて売上総利益が改善したことにより、増収増益となりました。アジアにおいても、シンガポール子会社およびインドネシア子会社等が好調に推移したことにより、増収増益となりました。

NGP-2、2年目となる今期は、国内の緩和的な金融環境などを背景に成長が見込まれるものの、米国、中国をはじめとする各国の通商政策等の動きやその影響に加え、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢等による地政学リスクは依然として高く、不確実性も極めて高い状況が続くと予想されます。香料業界においては、米国をはじめとして各国経済の影響が懸念されますが、東南アジア市場は引き続き成長が期待でき、さらには成熟市場である欧米での底堅い成長、中国、中南米および中東地域での伸長も見込まれます。

NGP-2では、「海外の成長」「国内の収益性改善」「サステナブルな経営」の3つを基本方針としています。そして、各3つの基本方針において、それぞれキーサクセスファクター(重要成功要因)を設定し目標達成に向けてどこに力点を置くかを明確化し、ステークホルダーへも示しています。「海外の成長」については、海外での売上高が年々増加していくなかで、事業軸による成長戦略や競争力のある技術を通じて着実にビジネスを拡大させてまいります。また「国内の収益性改善」については、グループ全体に占める売上高が最も大きい日本セグメントにおいて、製品ポートフォリオの最適化、新領域の開拓、費用構造改革などを通じ、更なる収益性の改善を図っていきます。また、「サステナブルな経営」につきましては、中長期サステナビリティ計画であるSustainability 2030の実行を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、経営基盤の強化を図り、持続的経営を推進します。

基本方針「サステナブルな経営」について

ここでは高砂香料グループが行っているサステナビリティへの取り組みについて、進捗を述べます。

現在取り組んでいるテーマの一つに世界的な気候変動に伴う課題があります。Sustainability 2030では、KPIとして温室効果ガス排出量を定期的にモニタリングしています。2020年4月、高砂香料グループは、TCFD提言に賛同し、その提言に則って気候変動戦略を策定しました。翌2021年には、温室効果ガス排出量のグループ削減目標について、国際的なイニシアチブであるScience Based Targets initiative(SBTi)から認定を受けました。更なるカーボンニュートラル社会への貢献を目指し、グループ削減目標の更新について議論を重ね、2025年4月には、1.5℃基準に合致した新たな目標を策定いたしました。新たな目標は、「2050年にバリューチェーン全体でネットゼロを達成する」というネットゼロ目標も含んでおり、これらの目標はSBTiに再び認定されています。今後、Scope1、2については、省エネ活動をさらに活発化させ、再生エネルギー由来電力の使用量を増やすことで、大きく削減していく予定です。Scope3については、2022年には環境省支援事業「サプライチェーンの脱炭素化支援事業」に参画し、そこで得られた知見を元に、サプライヤーエンゲージメント活動をグローバルに開始しました。原料のカーボンフットプリント情報の収集や気候変動に関するサプライヤー企業とのエンゲージメント活動を推進し、サプライチェーン全体での脱炭素化を図っています。

生物多様性の保全も非常に重要なテーマの一つです。高砂香料グループは、合成メントールの出発原料であるミルセンをはじめ、シトラス、ミント、バニラ、コーヒーなど多くの天然由来原料を使用しています。そのため、原料調達においては、サステナビリティへの配慮が求められます。現在、当社グループの調達部門では、主要天然原料をターゲットとして、独自の調達プログラムTakasago Global Procurement Sustainability Key Initiatives (TaSuKI)を進めています。その代表的な活動の一つに、米国フロリダ州でのグレープフルーツの植樹プロジェクトがあります。フロリダは世界有数のシトラスの産地であり、高砂香料グループも現地で加工されたグレープフルーツやオレンジなどの精油を長年に亘り購入していましたが、気候変動や病害の影響で年々生産量が減少していくことを危惧していました。そのような背景もあり、当社は、2019年から現地の精油加工メーカーとシトラス農園と協同でグレープフルーツの植樹プロジェクトを立ち上げました。立ち上げから5年目の2024年ようやく植樹したグレープフルーツから精油を得ることができ、当社グループの開発チームが活用できる状況になりました。2025年内で、フロリダでの植樹プロジェクトは一旦完了する予定です。

製品開発においては、「SDGsへの貢献を意識した製品の開発」をKey Success Factorsに設定しています。当社が有する環境配慮型の技術と環境負荷の低い製品群は、SDGsの課題解決に貢献でき、今後多くのビジネスチャンスがあると考えています。省エネルギーや省資源を実現する、当社独自の連続フロー技術や触媒技術、環境にやさしいカプセル香料の開発、生分解性の高いアロマイングリディエンツの開発等、さらに深化を図ってまいります。また、当社はバイオ技術を活用した、環境負荷の低い天然由来香料素材の開発に注力してきました。2024年には、「未利用原料から有用化学品を産み出すバイオアップサイクリング技術の開発」のテーマが、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のバイオものづくり革命推進事業に採択され、事業を開始しています。限られた天然資源の有効利用に向けて、再生可能資源の探索・利用、代替素材開発による天然香料素材の使用量削減にも積極的に取り組んでまいります。

高砂香料グループのサステナビリティ活動はESGの各分野から構成されており、分野ごとに多くの課題がありますが、引き続き一つひとつ丁寧に解決に向けた対応をしていきます。

NGP-2、2年度の抱負について

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桝村社長

今期(2026年3月期)は、対前年比で0.3%増の売上高2,300億円を目指します。営業利益は前期比18.5%減の125億円を目指します。米国の関税政策により、米国や中国では輸入原料に対する追加関税等が継続することを前提に、販売価格の見直しや原料調達の最適化を通じたコスト低減等の施策を行っていきます。設備投資においては、2025年9月、磐田工場の医薬品中間体製造設備の導入が完了しました。医薬品中間体の生産能力増強により、ファインケミカル事業の成長を促進していきます。また、新たな拠点として、2025年5月に、インド・ベンガルールに、テイスト・イノベーションセンターを開設しました。重要なマーケットと位置づけているインド市場において、消費者のニーズをより的確にとらえ、独自の優れた技術を駆使して新しい価値を提供していきます。加えて、グローバル基幹システムの導入プロジェクトも進めており、コーポレート経営基盤を強化していきます。

高砂香料グループでは、2040年のありたい姿を「Vision 2040」として定め、「人にやさしく、環境にやさしく」をスローガンに掲げています。NGP-2は、そのありたい姿へ向けて変革を推し進める重要なフェーズと認識しており、設定した方針、戦略に則り、施策を着実に実行してまいります。ステークホルダーの皆様におかれましては、当社グループの更なる発展にご期待いただき、今後も長期的なご支援を賜りますようお願い申し上げます。