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代表取締役社長 桝村 聡

2020年度の振り返りと営業状況の総括

2020年度は新型コロナウイルス(COVID-19)の拡大により、世界的に景気は大きく低迷しました。このような中、高砂香料グループの売上高は前期比1.4%減となりました。部門別に見ますと、フレグランス部門において芳香剤向け、ハンドソープ向け等が好調に推移した一方で、フレーバー部門においては当社および国内子会社の飲料向け等が低調に推移しました。また、アロマイングリディエンツ部門では主力品メントール等が、ファインケミカル部門でも医薬品中間体が低調に推移しました。

利益面では、営業利益は同136%増となり、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益も増益となりました。原料価格が前期よりも低下したことや、海外子会社のフレグランス部門が好調に推移したこと、加えて感染拡大の影響から一部経費が減少したことが増益に寄与しました。

2021年度は、感染拡大抑制と経済活動推進のバランスを模索する中で、緩やかながらも改善基調をたどると見ていますが、依然として不確実性の高い状況が続くものと思われます。高砂香料グループの売上高は、当期比0.4%増でほぼ横ばいと見込んでおります。利益面は、感染予防措置で当期は減少した一部経費が戻ることや、将来成長のための研究開発費、販売管理費が増加することにより減益を予想しております。

創業精神、企業理念、Vision 2040について

「技術立脚の精神に則り社会に貢献する」という文言は、高砂香料グループにおける普遍的な原則であり、創業から100年にわたり、我々の支えとなる「企業理念」でしたが、このたび創業100周年という節目を迎え、「企業理念」には、「高砂香料らしさ」を盛り込み、「香りを原点とする革新的な技術を通して、新しい価値を創造し続ける」とし、今までの企業理念は「創業精神」といたしました。

これらの「創業精神」「企業理念」を基に、先ほど申しましたグローバルでの全従業員が共感し、めざすことのできる、20年後2040年の高砂香料グループの「ありたい姿」が Vision 2040にあたります。

Vision 2040には「人にやさしく、環境にやさしく」をスローガンにしていますが、一人ひとりが輝ける豊かな会社の実現をめざすうえで、常に相手の立場に立ち、ともに考えることを「やさしさ」と表現しています。人々が身体的、精神的、社会的にも良い状態でいられる未来を創造する会社でありたいと思っております。もちろん、人の健康への配慮、地球環境への配慮なくして製品作りはあり得ません。

スローガンに続く4つの項目は、それらを具体的に表したものであり、それぞれ、企業としての姿勢、社員としての姿勢を示しています。

2021年度から始まる3ヵ年中期経営計画について

創業101年目となる2021年度から始まります3 ヵ年中期経営計画は、New Global Plan-1(NGP-1)と名づけました。NGP-1は「3つの基本方針」、「5つの柱」「7つの重点課題」から成り立っています。

「3つの基本方針」は、「海外の成長促進」「国内の利益改善」「サステナビリティの推進」です。以前は、海外での利益が安定しない中、日本が安定した利益を生み出すという利益構造でしたが、近年は、海外拠点が売上高、営業利益ともに安定的に成長してきており、グループ全体の業績を支えています。NGP-1期間においても、海外市場での成長をめざしてまいります。国内は、大きな市場の拡大は見込めず、近年は利益面で厳しい状況が続いております。しかし、海外での成長が著しいとはいえ、今なお売上高全体の4割以上を国内の売上が占めていることから、安定した収益を生み出す基盤としての役割を担う地域となるべく、利益改善をめざしてまいります。また、Vision 2040を実現し、長期的に事業の成長をめざす観点から、「サステナビリティの推進」を基本方針のひとつにしています。

「5つの柱」は、前の中期経営計画と同じ項目になりますが、前の中期経営計画では、2年目に原料高騰の影響を大きく受けたことや、3年目はコロナ禍で、十分な対応、課題解決までには至らなかった事情もあり、NGP-1でもこれらの柱を軸に継続して取り組んでまいります。

「7つの重点課題」は「3つの基本方針」「5つの柱」を受けて、Vision 2040に向けて新たに進めていくべきこと、前中期経営計画One-Tから引き続き、NGP-1において深化させるべきこと、を選びました。

高砂香料グループは新たな企業理念を基に、Vision 2040を掲げてさらに成長してまいります。

基本方針「サステナビリティの推進」に向けて取り組む課題

高砂香料グループのサステナビリティビジョンですが、経済性、環境性、社会性の三位一体を掲げています。事業の成長とともに、環境面、社会面においても「社会の一員としての責任を果たす」という当社グループの基本的な姿勢を表しています。

先の中期経営計画One-Tにおいて土台を整備し、今後10年間の行動計画をSustainability 2030としてまとめました。NGP-1ではその計画に沿って取り組みを進めてまいります。

 

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トップメッセージ

サステナビリティに関する課題としては、まず世界的な気候変動問題への対応が挙げられます。2020年、TCFD提言に沿った当社グループの方針(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4項目)を公表しました。リスク管理においては、ここ数年日本でも気候変動が要因と考えられる豪雨災害が多発しており、グループ全社的に強い危機感を持って、安全対策やBCP対応を進めています。豪雨災害により、地域の社会インフラが被害を受けることも多く、水の供給停止や物流の寸断といった問題も発生します。原料調達においても、ハリケーン、サイクロン、寒波などの被害の甚大化によって農作物への影響もあり、香料原料の供給不足や価格高騰などを引き起こします。これらはビジネスに直結する大きなリスクであると捉えています。

緩和策としてはCO2排出削減活動を強化することなどが挙げられます。CO2排出削減については、2019年実績に対し、2030年度に(Scope1+Scope2)において27.5%、Scope3において13.5%の削減目標を設定しました(2021年5月にSBTi認定取得)。(Scope1+Scope2)については、再生エネルギーの導入、エネルギーセービングプログラムや設備機器の適切なメンテナンスなどによる排出削減活動を進めていきます。

当社グループの排出量のうち最も大きな割合を占めるScope3においては、原材料調達だけでなく、物流関係などにおいてもお取引先様と協働し、排出削減に努めてまいります。低炭素化に向けての戦略においては、グリーンケミストリーが中心となりますが、バイオ技術を活用した新素材の開発や連続フロープロセスを用いた合成などを通じ、新たなビジネスの機会を創出していきたいと考えています。当社の有する技術とオープンイノベーションにより、革新的な商品開発を行っていきます。

人権も世界的に大きな課題です。One-T期間に、グループ人権ポリシーを策定し、人権デューデリジェンスの実施要項も構築いたしました。人権デューデリジェンスは人権侵害の防止のためのプロセスとなりますが、2年前より実施し、当社グループにおいて人権侵害がないことを確認しています。欧米諸国では人権に関わる規制が強化されています。世界の動きを注視しながら、当社グループ内だけでなく、ビジネス活動におけるサプライチェーンにおいても、お取引先様と価値観を共有し人権侵害防止に努めてまいります。

CO2排出削減の強化においても、人権侵害の防止においても、サプライチェーンにおける協働が欠かせません。持続的な成長と社会的な課題の解決に資する事業活動を展開するうえで、当社グループでは、原材料や事業に必要なサービス等の調達においては「コーポレート調達ポリシー」に基づいて責任ある調達に取り組んでおります。お取引先様との相互理解、連携をより確実にして推進したく、2020年、要望事項をまとめ直しサプライヤー行動規範を改定いたしました。お取引先様のサプライチェーンにおいても、当社グループ行動規範が適切に共有されるよう働きかけてまいります。

以上、環境、社会面についてご報告させていただきましたが、ガバナンスにおいてはITセキュリティの向上が挙げられます。サイバー攻撃が頻発している中、当社グループでもITセキュリティをグローバルで強化しています。ハード面の対策では、攻撃者の侵入を防ぐツールやデバイス認証を導入、ソフト面では種々のトレーニングを実施することで社員への啓蒙活動を継続的に行っています。他にもさまざまな課題がありますが、NGP-1ではグループ全社的にサステナビリティを推進してまいります。

One-T最終年度に始動したグローバルSAPプロジェクトについて、現在の進捗と今後の展開

One-Takasagoに向けた施策の一環として、2020年初めから、基幹系システムのグローバル統合を目的にグローバルテンプレート開発に着手しました。しかしながら、開始直後に新型コロナウイルス(COVID-19)拡大の影響から、プロジェクトメンバーが一堂に会して作業することができなくなり、リモートワークでの作業となりました。タイムゾーンの異なるメンバーとの日々の打合せや、直接会って話せないもどかしさを抱えつつ試行錯誤しながら作業には苦労されたことと思います。一方、リモートワークということもあり、さまざまな事情からプロジェクトに参加できないと諦めていた方々をも含め、逆にプロジェクトメンバーを拡大し、より多くの人たちに議論に参加して貰えたことは良かったと思います。打合せをビデオに録り、参加できない人はその録画を視聴するなど、リモートワークツールを駆使し時間差を埋めるように努めています。今までのところ プロジェクトは順調に推移していると考えています。

2021年半ばにグローバルテンプレートの開発作業を終え、その後海外主要拠点への導入作業へ移っていきます。このプロジェクトを通して、ベストプラクティスとなる形で業務フローをグローバルで統一していきます。グローバルテンプレートの導入により、原価計算等の会計基準も統一されることになり、同一基準かつタイムリーな経営データを入手することが可能となります。また、業務プロセスも統一されることで、どの拠点でも同じように働けるためグローバルでの人材活用の幅が広がり、BCPの体制強化にもつながると考えています。

NGP-1初年度の業績予想について

今期の連結業績予想は、売上高151,000百万円(前期比0.4%増)、営業利益5,000百万円(前期比20.5%減)、経常利益5,300百万円(前期比27.2%減)となります。売上高は微増ですが、前期はコロナ禍で抑制されていた販売管理費が増加し、営業利益は対前年-13億円の減益を予想しています。

研究開発費も増加を見込んでおり(対売上高8.1%の比率)、7つの重点課題のひとつであるSDGsへの貢献を意識した製品の開発(生分解性の高いアロマイングリディエンツ等の開発強化やCO2排出量の多い分離工程の代替技術の開発強化)に積極的に取り組んでまいります。

持続的な成長を続けていくうえで、サステナビリティ課題への対応は必須です。一つひとつの課題に真摯に取り組み、ビジネスの成長とともにマーケットプレゼンスを拡大し、環境面・社会面においても社会の一員としての責任を果たしていきたいと考えております。

ステークホルダーの皆様におかれましては、引き続きご理解とご愛顧のほどよろしくお願いいたします。