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Section 1

ご挨拶  &  パリの地図

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~ パリと香水展 開催のご挨拶 ~

この度、高砂コレクション® ギャラリーにおいて、パリと香水との深い結びつきを歴史的に振り返る企画展を開くことになりました。

パリは香料会社にとって特別な都市です。また香水は香料会社にとって特別な意味を持ちます。パリと香水、このふたつの特別な存在へのオマージュとして、この展覧会を開催することを大変うれしく思います。
 
当社とパリとの関わりは、当社創業者である甲斐荘楠香が香料を学ぶため、1910年にヨーロッパに渡った際に立ち寄ったことに始まると言ってよいでしょう。香料の研修はグラースとジュネーブで受けましたが、何度かパリにも足を運び、特に1913年には当時大きな発展を遂げつつあったコティ社の工場を見学し、大きな刺激を受けました。その後、1920年の高砂香料の設立を経て、戦後1960年にパリオフィスを設置し、1970年代末にはその名もTAKASAGO EUROPE PERFUMERY LABORATORYという会社を立ち上げます。「香水の本場」で苦戦は続きましたが、1980年代後半から香水向け調合香料ビジネスが始まり、現在では今回展示されている有名香水ブランドにも納入しています。
 
19世紀後半以降に飛躍的な発展を遂げた「パリ発」の香水は、20世紀になると世界に広まり、パリはまさに「香りの都」になっていきます。本展では、さまざまな美しい香水瓶(フラコン)を、それぞれのブランドのビジネス形態ごとに展示しましたので、現在の香水ブランド百花繚乱に至る過程をお楽しみいただけるかと思います。フラコンのデザインの美麗さ、あるいはネーミングの妙や、広告ポスターのさまざまな意匠などを味わっていただければ幸いに存じます。
 
高砂香料工業株式会社 代表取締役社長
桝村聡

Section 2

クラシック香水瓶の世界

「クラシック香水瓶」という分類用語があるわけではなく、ここでは19世紀末から20世紀初頭のゲラン、ピヴェール、ウビガン、コティといった、香水専門店から発売された、比較的古典的な形状の香水瓶(フラコン)を便宜的にそう呼ぶ。フラコン自体の比較的シンプルなフォルムと、凝ったラベルや蓋を特徴とし、ジュレ・フレールのポスターとともに、古き良きパリのエレガンスが感じられる。


展示の中でひときわ目を引くのはシャリマールの大型瓶であろう。店舗でのディスプレー用に作成されたもので、この形はChauve-Souris(コウモリ)と呼ばれ、コウモリが羽を拡げた姿をモチーフとする。1925年のアール・デコ展に際し、レモン・ゲランによってデザインされた。

 

 

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アール・ヌーヴォーと香水瓶

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1890年頃から植物や動物の優美な曲線をモチーフとした、アール・ヌーヴォーと呼ばれるデザイン様式が流行した。その影響は、美術や建築、工芸といったあらゆる分野に及んだ。日本の美術品に影響を受けた、いわゆるジャポニスムの作品も多い。


エミール・ガレとドーム兄弟はガラス工芸におけるアール・ヌーヴォーの代表的な作家である。彼らは花瓶やランプなどの装飾品と並んで多くの香水瓶(フラコン)のデザインを手がけた。木蓮の花びらを優雅な曲線にデフォルメした紫色の美しいガレの香水瓶や、草花や風景を小さな香水瓶の世界に封じ込めたドーム兄弟の作品は、市販の「香水」を入れるための容器とは一線を画する、美術品としての価値を十分に感じさせてくれる

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香水商の時代
 

1774年に創業したピヴェール社は、自身が調香を手がける調香師/香水商(parfumeur)として出発し、1930年以降に大きな発展を遂げる。それ以前は薬剤師などか手がけていた香水だが、19世紀後半以降は香水商が香水業の中心となる。


一方、20世紀になって創業されたコティは、フランソワ・コティの天才的な調香能力と、広告を含めた商才により瞬く間に成功を収める。コティはファッションデザイナーの香水ブランドが市場を席捲する直前に現れた、遅れて来た調香師/香水商(parfumeur)とでも言うべき存在である。


この時期のフラコンの特徴として、瓶自体よりも蓋の方の造形に意匠を凝らす点が挙げられる。この傾向は次の展示ケースにある、同じく香水商出身のゲランにも見られる。

 

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ゲランの伝統

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1828年、ピエール・フランソワ・パスカル ゲランによって創業されたゲランも、parfumeur(香水商/調香師)として、五世代にわたって数多くの名香水を創香して来た。
特に、第三世代のジャック ゲランは “Après L‘Ondée(1906)”, “L’heure bleue(1912)”, “Mitsouko(1919)”, “Shalimar (1925)”, “Vol de Nuit(1933)” などの名品を残している。


フラコンのデザインにおいても、ラリックやバカラと組んで香水史に名を残す数々の名品を生み出して来た。

また、四葉のクローバーやハートの型といった幾つかの凝った蓋のデザインが定番としてあり、ひとつの香水が複数のフラコンで発売され、逆に同じフラコンを異なる香水に用いるなど、ゲラン独自の伝統がある。現在はゲラン家出身の調香師こそいないものの、専属の調香師がゲランブランドの創香を手掛けている。

 

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ファッションデザイナーと香水

現在では当たり前のものになっている、ファッションデザイナーやファッション・ブランドの名を冠した香水も、実はそう古いものではない。

香水は香水商が出すのが当たり前だった時代に、最初に香水を手がけたファッションデザイナーはポール・ポワレと言われている。ポワレは1904年にパリで開業し、1910年代前半までファッション界で華々しい活躍をしたが、第一次世界大戦後は時代遅れとみなされるようになっていた。


ポワレに先だってパリで有名になっていたイギリス人デザイナー、シャルル・フレデリック・ウォルトも、ポワレより遅れるが1920年代から香水を出し、コレクター垂涎の数々の名作フラコンを生み出した。


今回は、そうした名作フラコンに加え、ポスターや販促用のプレートも展示する。
 

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ファッションとアート

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アール・ヌーヴォーやアール・デコが流行した時期(19世紀末~20世紀初頭)は、芸術作品と装飾品や工芸品との境界が揺らぎ始めたことでも知られる。

芸術家や工芸家、ファッションデザイナー間の交流も盛んで、それが香水瓶にも影響を与えた。ファッションデザイナーとしてココ・シャネルのライバルであり、芸術家たちと華やかな交友のあったスキャパレリの香水瓶をサルバドール・ダリがデザインしたのはその好例である。


一方、同じくデザイナーのジャン・パトゥの香水「ミル」のフラコンは、主に18世紀に流行した嗅ぎ煙草を容れる、中国製の「鼻煙壺」からデザインを借用したもので、青磁の模倣とともに東洋の工芸品イメージを流用したものと言えよう。
 

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ニナ・リッチと香水

イタリアに生まれ、パリでお針子としてキャリアをスタートさせたニナ・リッチも、香水の世界では欠かすことのできないブランドである。

クチュリエ・メゾンとしては1932年に出発するが、香水の発売自体は第二次世界大戦後の1946年、瓶の真ん中をハート形にくり抜いたマルク・ラリック作のフラコンが印象的な、Coeur Joieが最初である。その後も有名なL’Air du Temps(1948)をはじめ、Farouche(1974)、Signoricci(1974)、Nina(オリジナル1987)など、商業的にも成功し、香水瓶としても優れたヒット作を出している。


なお、Fille d’Eve(1952)に始まった、リンゴの形をモチーフにしたフラコンを、Ninaシリーズの香水などで色や形状をアレンジしながら現在も使うことが多く、ブランドイメージを定着させることに成功している。
 
 

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Section 9

アルページュと5番(ニュメロ・サンク)

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世界で最も有名な香水と言えば、シャネルの5番であろう。

名調香師エルネスト・ボーとガブリエル・シャネルが1921年に世に問うた、知らぬ人のない名作である。アルデハイドを大胆に使った、フローラル・アルデハイド調の嚆矢とされることが多いが、実際にはそれ以前にボーによって似たタイプが作られていたことが今では知られている。


一方、1927年にアンドレ・フレスによって創香された、Arpègeも、フローラル・アルデハイド調の成功した香水のひとつである。ファッションデザイナーのジャンヌ・ランバンが音楽家である娘のために、香水のネーミングを音楽用語から採った。その調和の取れた美しい香調は、5番よりも後の調香師に与えた影響は大きいと言われている。
 

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ディオールの帝国

1947年に登場し、第二次世界大戦後のファッション界に君臨したディオールは、香水の世界でも比類のないブランドである。

Miss Dior(1947)に始まり、名調香師エドモン・ルドニツカによるDiorrisimo(1956)、Eau Sauvage(1966)を始めとして、Poison(1985)、Fahrenheit(1988)、Dune(1991)と、それぞれの時代に話題作、野心作とも呼べる香水を発売して来た。そして、1999年発売のJ’adoreは世界的な大ヒットとなり、香水産業におけるディオールの地位を揺らぎないものにしたと言っても過言ではない。


近年は、LVMHグループの中核ブランドとして、ルイ・ヴィトンとともに専属調香師を置き、過去の名作香水をモダナイズした改訂版や、フランカーと呼ばれる主要な香水から派生したライン、コレクションラインなど数多くの香水を上市している。
 

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Section 11

サンローランとジバンシィ

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ディオールの後にDiorの主任デザイナーになったイヴ・サンローランと、スキャパレリのメゾンで修業したユベール・ド・ジハンシィは、世代的にはディオールの一世代後に属する。もはや、ファッションデザイナーが香水を出すことは当然になっていた時代に、それぞれのクチュリエ・メゾンを立ち上げたことになる。


そのせいもあり、このふたつのブランドはディオールに劣らず、多くのベストセラー香水を世に出してきた。

Givenchy Gentleman(1974)など、比較的早い時期からメンズ香水に力を入れてきた感のあるジハンシィだが、女性用でもYsatis(1984)、Amarige(1991)、L’Interdit(1957/2018)など忘れがたい名香を出している。一方のサンローランも、Opium(1977)、Paris(1983)、Baby Doll(1999)など、大きな話題とともにヒットとなった香水が少なくない。
 

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さまざまなフォルム

1970年代くらいから、ファッションの世界がよりグローバル化し、パリ、ニューヨーク、ロンドン、ミラノなどがその中心都市となるとともに、世界中からデザイナーがパリに集まり、中には大きな成功を遂げた者も少なくない。

そして、そうした新興ブランドの多くが、ライセンス契約などにより香水を出していく。その際、既存の大手メゾンとの差別化を図る意図もあり、ネーミングや香調の奇抜さ、目新しさに加え、それまでにないフォルムのフラコンが登場することになった。日本人デザイナーの名を冠した、円錐形の美しいフォルムのEau d’Issey(1992)や、スキャパレリに先例はあるものの、トルソー型のLe Mâle(1995)などがその代表と言えよう。今回は形状の奇抜さから幾つか選んだ。
 

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Section 13/14

ヴァンドーム広場のビジュトリー(宝石店)と香水

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パリの中心、チュイルリー公園の北東に位置するヴァンドーム広場は、華やかなシャンゼリゼ通りとはまたひと味違う、シックな広場である。

中央にはナポレオン像が頂上から見下ろすオーステルリッツ記念塔があり、それを取り囲む建物には、高級ホテルや宝石店、高級時計店やオートクチュールのブティックが軒を競う。パリでもとりわけゴージャスでラグジュアリーな一角である。


このパリと香水展では、薬品店から進化する形で香水商が現われ、やがてファッションデザイナーのブランドが出現し、大きな発展を遂げる様を見てきた。その後、宝石店、高級葉巻、高級靴デザイナー、皮革製品、高級時計、高級文具やスポーツカー、さらにはセレブリティなどのブランドが香水を出すようになった。パリの香水展のフィナーレとして、ここでは宝石店の香水を展示する。


宝石店が香水を出すようになったのは、実はさほど古いことではない。

盛んに新たな香水が発売されるようになったのは1980年代後半から1990年代くらいにかけての時期である。ジュエリーも扱うが、バッグやファッション、アクセサリーなど多様な商品を扱うエルメスのようなブランドは早くから香水を手がけていたのに対し、ラグジュアリーさでひけを取らない宝石店が長いこと香水を出していなかったことは、不思議ですらある。


宝石店としては、カルティエやヴァン・クリーフ&アルペルが香水に熱心なほかは、ブシュロン、ショーメ、ショパールなどは、ファッション・ブランドと比べると、さほど頻繁に新発売を出していないようである。とは言え、宝石店だけに、それぞれの宝飾品の代表的なデザインを活かしたフラコンはきらびやかで美しいものが多い。
 
 

Section 15/16

ピヴェールの見本帖

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Section 17

香水を嗅ぐ少女

オートマタ人形

オートマタは18世紀から19世紀にかけて、フランスを中心に作られた機会人形のこと。当時流行の衣裳を着せ、すぐれた人形制作者との協力により芸術的な数々の傑作が誕生した。

この人形は、ゼンマイを巻くとオルゴールの音色にあわせて右手に持った香水瓶と左手のハンカチを動かし、香りを嗅ぐ仕草をする。人形の頭部はジュモー(Jumeau)作、オートマタはランベール工房(Lambert)で製作され、パリ万国博覧会でメダルを受賞した。
 

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Section 18

香水の香りコーナー

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香水を嗅げるコーナーを設けました。


今回その香水瓶も展示されている


Mitsouko (Guerlain)
Diorissimo (Dior)
Paris (YSL)


の3点です。


ドーム状のガラスの蓋を持ち上げ、その内側を顔に近づけて香りを嗅ぎます。
ほのかに立つ香りをお楽しみください。
 

ロビー会場

ロビー会場にも、ラリックの作品を中心としたフラコンの数々、そして十文字美信氏撮影の美しい写真が展示されていますので、ゆっくりとご覧ください。

また、会場ではアンケートも実施していますので、今後の参考のためにご協力お願いします。

 

※会場でアンケートに回答できなかった方は、下記QRコードから送信が可能です。

 

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