2008年度「野依賞」はアンドレアス・ファルツ教授に

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将来にわたり持続可能な社会に貢献する不斉合成技術の振興をはかる高砂香料国際賞「野依賞」が、スイス、バーゼル大学化学科のアンドレアス・ファルツ(Andreas Pfaltz)教授に贈られました。

国際選考委員会(福山透委員長)でファルツ教授が2008年度(第7回)の「野依賞」受賞者に選出され、2月20日に都内のホテルで開催さ れた有機合成化学協会(SSOCJ)の通常総会で表彰がおこなわれました。ファルツ教授には迫田良三SSOCJ会長より賞状と盾、そして賞金10,000 ドルが授与されました。

ファルツ教授は、不斉触媒の分野への独創的な貢献で著名な研究者で、教授のグループが開発したセミコリン類は、窒素配位子の重要な新しい系統であるビスオ キサゾリン類のプロトタイプとなっています。ビスオキサゾリン類は触媒的不斉合成において広範な用途が見出されています。PHOX配位子として知られるホ スフィノオキサゾリン類に関する教授の研究からは、多数の効率的なキラル遷移金属触媒が得られています。

最も注目に値するのは、イリジウム-PHOXとその関連錯体であり、これは官能基を有さない単純なアルキル置換オレフィン類の高度なエナンチオ選択性水素添加反応を可能とする初めての触媒であり、これにより不斉水素添加反応の適用範囲が大きく広がっています。

表彰式で、野依良治博士は「 アンドレアスと最初に出会ったのは、1983年3月のことだったと記憶しています。すでに私は不斉合成の世界にどっぷりと浸かっていたのですが、彼にとっ てスイス連邦工科大学での恩師であったアルベルト・エッシェンモーザー教授が、若き日のアンドレアスをこのエキサイティングな分野の新来者として私に紹介 してくれたのです。翌年、あるセミナーで聴いたアンドレアスの講義は、たいへん明快かつ感動的なものでした。アンドレアス・ファルツ教授はきわめてスイス 的な人物だと、私は理解しています。まじめで理路整然としていて、勤勉。仕事ぶりも、まるでスイス時計のようにくるいがありません。それでいて礼儀正し く、寛大で社交的で温厚です。アンドレアス・ファルツと私はスイスで出合ってから20年以上もの間、同じ道を互いに歩んでまいりましたが、彼は少なくとも あと10年は精力的な研究を続けることができるでしょう。野依賞は、これまで最も相応しい化学者だけに授与されてきました。ここにアンドレアス・ファルツ という名前が加わることは、本賞の信頼と意義をさらに高めるものと確信しています」と述べました。

写真: 野依良治博士(左)とアンドレアス・ファルツ教授(右) 2009年2月20日 表彰式で